(後編)第5回 私のリンパ浮腫経験談

前編では、リンパ浮腫の診断を受けるまでの経緯や、どのように情報を集め、自分に合ったケアを見つけてきたのかについて、お話しいただきました。

リンパ浮腫は発症後も長い付き合いが必要な症状です。 後編では、リンパ浮腫と向き合いながら13年間を過ごしてきた経験や、皆さんが関心を寄せるLVA手術※についてもお聞きしました。リンパ浮腫を抱えながら日々を過ごす工夫やリアルな声を通じて、少しでも役立つヒントを見つけていただければと思います。

※LVA手術とはLVA(リンパ管静脈吻合術)は、リンパ浮腫の治療法として一部保険適用されている外科的治療です。

参加者の自己紹介


松田 しょう子さん(仮名)・40代
子宮頸がん4年生
リンパ浮腫発症部位:右下肢

治療内容:LVA手術・圧迫療法

お住まい:福岡県福岡市

子宮頸がんに罹り、子宮と卵巣を全摘しました。それから半年後に右足に違和感を感じ、リンパ浮腫と診断されて3年半が経ちます。

鶴田 淳子さん・50代
乳がんと子宮頸がん 3年生
リンパ浮腫発症部位:右上肢

治療内容:LVA手術・圧迫療法

お住まい:東京都小平市

乳がんで右の胸全摘手術の際にリンパを切除。術後すぐに右腕に違和感を感じました。「絶対におかしいな」と思い続け、医師に痛みを訴え続けるも、なかなか診断してもらえず、リンパ浮腫と診断されたのは術後2年経ってからでした。
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朝香 礼さん(仮名)・50代
乳がん2年生
リンパ浮腫発症部位:右上肢

治療内容:圧迫療法

お住まい:福岡県福岡市

乳がんの手術を受けて少し違和感があったものの、術後の引きつりと思って過ごしていました。術後2年が経ち、運動を始めようとYouTubeで激しめの運動レッスンをしてみると、二の腕の腫れがひどくなり、リンパ浮腫と診断されました。
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川田 美歩さん・50代
子宮頸がん13年生(発症年齢:30代)
リンパ浮腫発症部位:右下肢

治療内容:LVA手術・リンパ移植・脂肪吸引・圧迫療法

お住まい:福岡県福岡市

手術後すぐにそけい部が腫れてきて、それから右足がどんどん浮腫んできました。下に下がっていくような重たさを感じ、リンパ浮腫と診断されました。リンパ浮腫の合併症として蜂窩織炎(ほうかしきえん)を何度も発症し、あまりの酷さに救急車で運ばれて病院へ行くこともありました。これまで「リンパ浮腫に効果的」と言われる、ありとあらゆることを試しています。
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進行役:上野 さくらさん(仮名)・40代
乳がん8年生、血液がん6年生

情報不足から始まり、
リンパ浮腫と13年にわたって向き合い続けてきた

川田さんは13年もの間、リンパ浮腫と向き合ってこられたとのことですが、その間、大変だったことやどのように工夫して乗り越えてきたのか、ぜひお聞かせください。

13年間を振り返ると、発症当初、とにかく辛いのに、リンパ浮腫に関する情報がほとんどなくて本当に困りました。

それは大変でしたね。どのように情報を集めたのですか?

とにかくネットで調べました。すると、リンパ浮腫のLVA手術に関する情報が出てきて、東京大学医学部附属病院に名医がいらっしゃるという情報が1つ出てくるぐらい(泣)。私はそれを頼りに、東京に行き、LVA手術を受けました。

それはすごい決断ですね!福岡から東京まで行かれたんですね。

はい。当時、私は救急車で運ばれるぐらいリンパ浮腫の合併症である蜂窩織炎(ほうかしきえん)がひどく、とにかく辛かったんです。東京大学医学部附属病院でも「これは大変だ」ということで、普通なら半年待ちだったのですが、すぐに手術をしていただきました。

それは本当に緊急の状況だったんですね。

そうなんです。でも、LVA手術を受けても完全に治るわけではなくて、数年後にはまたむくんできてしまうんです。結局、その繰り返しですね。むくみのケアも大変なんですが、私は10年ほど経過したころ、陰部の皮膚に水泡のようなものができてしまったんです。それが本当に痛くて。

えっ…それは想像以上にお辛かったでしょうね…。

はい…。皮膚科や婦人科をいくつも回りましたが、結局何も分からなくて、ただ患部に塗る抗生剤をもらうだけでした。産婦人科では尖圭コンジローマかもしれないと言われ、薬を使っても治らず…。その時も自分でネットでとにかく調べました。 調べていくうちに、東京のリンパ浮腫専門の病院にたどり着いて、そこで「リンパ症候群」というものが私の症状と一致していると分かりました。それを婦人科の先生に伝えたら、なんとその先生が「そのネットに載っているリンパ浮腫専門の先生は、私の後輩です」と言われたんです。

そんな偶然があるんですね!

そうなんです!それで、後輩がやっているなら間違いないと言われ、手術の方法があることが分かりました。それで、再び婦人科に行き、九州がんセンターに紹介状を書いてもらい、手術を受けて症状は治まりました。

がんの治療ではないけれど、がんセンターに行かれたんですね。

はい、九州がんセンターに「皮膚腫瘍科」という診療科があって、そこを産婦人科の先生が紹介してくださいました。

がんの副作用でリンパ浮腫になって、またその副作用で蜂窩織炎やリンパ症候群といった症状が次々に現れる…まさに連鎖的に症状が出てきたということですね。

そうですね、足が元の正常な状態に完全に戻るのは難しいと思いますが、 私の場合は8割ぐらいは戻っています。今は圧迫療法と自分でマッサージをするなど、気を付けながら生活しています。

LVA手術体験談

川田さんのお話にも出てきましたが、LVA手術について実際に受けられた方はいらっしゃいますか?その手術を受けた後、どのような変化がありましたか?

私は2回、LVA手術を受けました。1回目の手術後は、顕著に足が細くなったんです。手術前は、タイツを履いても足がパツパツで、曲げるとものすごく痛かったんですが、その痛みがすっかりなくなりました。1回目の手術の効果は本当に大きかったです。

それは本当に嬉しい変化でしたね!

そうなんです。でも、1回目の手術後しばらくして、また少しずつ進行してきたので、先生と相談して2回目の手術を受けることにしました。2回目の手術直後は、正直1回目よりもむしろ状態が悪く感じました。でも、今ではかなり良くなっています。だから、川田さんが言うように、LVA手術は何回か受ける必要があるかもしれませんね。

私もLVA手術を受けました。リンパ液が漏れているリンパ管が5、6本あるんですけど、1回の手術で保険適用されるのは最大2本までなんです。なので、まずは漏れがひどい箇所の2本を治療してもらいました。完全には治らないんですが、手術を受ける前に比べると、むくみがかなり柔らかくなった気がします。2回目以降は、状態を見ながら必要に応じて手術を続けていく予定です。

なるほど、個人差はあるものの、何度か手術を重ねることで、少しずつ改善していくのかもしれませんね。

リンパ浮腫と向き合う日々の悩み

リンパ浮腫があることで、日常生活での困りごとを教えてください。

もともと太っていたこともあったのですか、がん治療を始めた時に、10kgも痩せたんです。でもその後、少しずつ体重が戻りつつあって…。先生には「体重を増やさないように」と言われているんですけどね。

私も、体重管理には気をつけるように言われました!

それで運動を始めてみたんですが、腕が腫れちゃって…。最近ジムに通い始めて筋トレも挑戦しようと思ってるんです。でも、どこまでやると腫れるのか、どこまでなら大丈夫なのか、まだよく分からないんです。今、それが一番の悩みですね。

運動って結構、個人差があるので、難しいところですよね。

そうなんです。腕をどの程度使ったらダメなのかは、きっと人それぞれ違うと思うんです。だから、自分の体の反応をしっかり見ながら、専門家と相談しつつ進めていきたいと思っています。

私の場合、足はどうしても使わざるを得ないんですけど、昔はマラソンもしてたんです。でも、リンパ浮腫になってからは何もできなくなってしまって…(涙)。あと、海などのアウトドアにも行けなくなったり…。 筋肉はつけたほうがいいので今はピラティスを始めました。これが私にはあっているみたいで、続けてみようと思っています。 夏は本当に辛いです。タイツを履いて足を隠したいからズボンを履くんですけど、そのせいで汗をかいて湿疹ができることもあります。

それは辛いですね…。

ずっと座っていることもきついですよね。立っている方がまだ楽で、ストレッチとかして体を動かしていないと、体全体がだるく重くなってしまうんです。

それに、弾性着衣ももっとおしゃれなものがあってもいいですよね!

本当にそれ思います!もっとデザインが考えられたものがあれば、着る気分も全然違うんですけど。

それぞれがリンパ浮腫と向き合いながら日常生活を送ることは、さまざまな困難がありますね。リンパ浮腫の治療やおしゃれで機能的な着圧の製品などは、患者のQOL向上に必要ですし、適切な運動など日常生活を安心して過ごすための手段など、チアーズビューティーでの情報発信で術後の生活が少しでも快適になればと思いました。 皆さんが自分に合った方法を見つけ、日々前向きに過ごされている姿勢には本当に励まされます!

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