春の食養生・生活養生

春は「発(はつ)」の季節
 春は、自然界のエネルギーが内から外へと伸びはじめる季節です。
 冬の間に内側へと蓄えられていた生命力が、芽吹きとなって現れます。
 薬膳では、この春のエネルギーを「発陳(はっちん)」――古いものを押し出し、新しい流れを生む力として捉えます。
 この流れに逆らわず、やさしく後押しすることが、春の養生の基本です。

春に養うべき臓腑 ―「肝」
 春は、五臓のうち「肝」の働きがもっとも盛んになる季節です。
 肝は、気・血の流れをスムーズに保つ、感情(特に「怒」)と深く関わる、血液を貯蔵・調節する、解毒を担うなど、心身のバランスを保つために欠かせない重要な役割を担っています。
 春は寒暖差が大きく、天候も不安定なため、私たちの心も揺れやすくなります。
 「なんとなくイライラする」「気分が落ち着かない」と感じることが増えるのも、この時期の特徴です。
 こうした状態は、肝のエネルギーが滞っているサインでもあります。
 できるだけストレスを溜め込まず、心をゆるめることを意識しましょう。
 また、肝は目や筋とも深く関係しています。
 春に「目が疲れやすい」「筋がこわばる」といった不調が出やすいのも、肝の影響と考えられます。

春の食養生
 春の食養生のキーワードは「巡らせる」「軽やかにする」「やさしく補う」ことです。
⒈苦味・香りを少し取り入れる
 春野菜や山菜に多い、ほろ苦さや香りには、
 肝の働きを助け、冬のあいだに溜まった滞りを外へと導く力があります。
 例:菜の花、ふきのとう、たらの芽、うど、春菊、三つ葉、せり など
 「食べてデトックスする」というよりも、自然な排出をそっと促すイメージで取り入れましょう。ただし、苦味のある食材は体を冷やしやすいため、冷え性の方は控えめにし、加熱調理がおすすめです。

⒉食べ過ぎない・重くしない
 春は肝の働きが活発になる分、肝臓に負担をかけないことが大切です。
 油っこいもの、味の濃いもの、冷たいものは控えめにしましょう。「腹八分」「温かく、消化しやすく」を意識することで、肝と消化器を同時に守ることができます。
 また、陽気を育てる温性の食材や、やさしい甘みのある食材を上手に取り入れるのもおすすめです。

⒊酸味の使い方
 春の味は「酸味」です。酸味は肝に入りやすい性質を持ちますが、収斂・固渋作用があるため、摂りすぎると陽気の生長や発散を抑えてしまいます。
 一方で、肝の熱がこもり、イライラが強いときには、酸味が潤いを与え、余分な熱を静めてくれます。体調に合わせて、「控えめに、上手に」使うことがポイントです。

⒋補血・滋養作用のある食材をとる
 肝は血液を貯蔵する臓器でもあります。
 肝の血が不足すると、めまい、目の疲れ、乾燥、不安感など、さまざまな不調が現れやすくなります。補血作用のある食材を、消化のよい形で取り入れましょう。
 例:落花生、にんじん、ほうれん草、小松菜、なつめ、牛肉、ごま、イカ、葡萄 など

春の生活養生
⒈早起きを少しずつ
 春は「夜は早めに休み、朝は少し早く起きる」季節。
 太陽のリズムに少し歩み寄るだけで、気の巡りは整いやすくなります。

⒉体をゆるめ、伸ばす
 激しい運動よりも、軽い散歩、ストレッチ、深い呼吸など、筋と気を伸ばす動きがおすすめです。肝は「筋」を司るため、体を伸ばすことは、そのまま心の緊張をゆるめることにつながります。

⒊感情を溜め込まない
 春は感情が動きやすい季節です。怒りや焦りを「ダメなもの」と抑え込むのではなく、 気づいて、流すことが大切。
 春の食養生・生活養生が夏に思いきり活動するための土台となります。

春の香味野菜と浅蜊の気巡りサラダ

目的
 解毒、平肝作用、気の流れをスムーズにする
材料(6人分)
 君:トマト 臣:浅蜊 アボカド 佐:セロリ・香味野菜 使:酢など

<下ごしらえ>
浅利は塩を入れた沸騰した湯に茹でておく
トマトとアボガドは切っておく
陳皮は酢につけておく
上記の材料でドレッシングを作る
<レシピ>
材料をすべて合わせて、器に盛り、ドレッシングをかける

東方健寿実業株式会社
代表取締役 王一 ゆいさん

1973年 中国 黒竜江省生まれ。1994年来日。名古屋商科大学 大学院修了。(経営学修士)
現在、東方健寿実業株式会社 代表取締役、東方薬膳学院、東方薬膳食堂、東方易経研究院、オンランスクール養生大学、天地・礼心養生文化館を運営。
実生活に役立つ薬膳・易経を伝える講師として活動して17年目。易経の原理原則を応用したことで、過去に経営した薬膳レストランは年間4万人が訪れる大繁盛店に。

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