リンパ浮腫はがん治療の副作用として多くの患者さんに影響を与えますが、その存在を知らなかった方が多いのが実際のところです。さらに、専門的なサポートが不足している中で、どのように情報を集め、どんな方法で自分に合ったケアを見つけていったのか、その体験をシェアしていただきました。
参加者の自己紹介
松田 しょう子さん(仮名)・40代
治療内容:LVA手術・圧迫療法
お住まい:福岡県福岡市
鶴田 淳子さん・50代
治療内容:LVA手術・圧迫療法
お住まい:東京都小平市
朝香 礼さん(仮名)・50代
治療内容:圧迫療法
お住まい:福岡県福岡市
川田 美歩さん・50代
治療内容:LVA手術・リンパ移植・脂肪吸引・圧迫療法
お住まい:福岡県福岡市
進行役:上野 さくらさん(仮名)・40代
乳がん8年生、血液がん6年生
「リンパ浮腫」なんて知らなかった…
皆さん、病気になる前に「リンパ浮腫」という言葉をご存知でしたか?
私は全く知りませんでしたね。「リンパ浮腫」という言葉すら初めて耳にしました。
私も同じです。
私もそうですね。手術をする前は「リンパ浮腫」なんて言葉、聞いたことすらなかったです。
私は仕事でボディケアをしていたので知っていました。それもあって、乳がんと診断された時はショックでしたけど、それと同じくらい「リンパ浮腫には絶対なりたくない!」って強く思いました。職業柄、リンパ浮腫の大変さを知っていたので、その恐怖が大きかったんです。
リンパ浮腫を知らなかった方は、乳がんや子宮頸がんと診断された時、病院から何か説明を受けて知りましたか?
そうですね。手術前か後か、正確には覚えていないんですが、看護師さんから「術後にリンパ浮腫になる可能性がある」と説明を受けました。注意事項として「これをやってはいけません」とか、マッサージのやり方や日焼けを避けるべきことなども教えてもらいました。でもその時は、正直、自分が発症するなんて思わなくて…。もともとむくみにくい体質だったので、どこか他人事のように感じてしまったんですよね。
私は手術後に作業療法士さんから説明を受けました。ただ、術後は体調も不安定で、心が落ち着いていなくて…。例えば、体に管がついているのが気持ち悪かったり、当時は四十肩で肩の痛みも強くて、リンパ浮腫のことまで気が回らなかったんです。一応説明は聞きましたけど、その時は正直、頭に入ってこなかったです。
術後の混乱の中だと、そういう気持ちもわかります。
ええ。 「詳しいことは後で読んでください」と言ってプリントを渡されて、マッサージの仕方も書いてあったのですが、よく分からなかったです。
私は手術の説明の時に主治医と看護師さんから、「子宮頸がんの手術をされた方は、排尿障害が起こることが多いのとリンパ浮腫になる可能性が高いです」と丁寧に説明してもらいました。
いいなぁ〜。
さらに、排尿訓練を1ヶ月しながら、リンパ浮腫になった時のための体操も教えていただきました。その体操にはリンパ浮腫予防も含まれていたと思います。自分の病室のベッドでリンパ体操をやっていた記憶がすごく残っています。
えっ、すごいですね!そんなサポートがあったんですか?!
あと、手術をした病院とは別に、リハビリ専門の病院にも入院していたので、ストレッチポールを使った運動指導も受けました。
リハビリまでしっかり指導してもらえたんですね!
そうなんです。その病院はリハビリ専門だったので、理学療法士さんがとても丁寧でした。その時に教わった運動を、今でも毎日欠かさず続けています。
羨ましいです…。私は何のサポートもなかったので、自分の知識だけが頼りでした(泣)。
病院によって対応が全然違いますね。
「もしかして…?」
リンパ浮腫と診断されるまで
がんの術後の経過観察中、どのようにリンパ浮腫と診断されましたか?
私は右足の異変に気づいて、通院している病院で週に1回リンパ浮腫外来があったので診察してもらい診断を受けました。
リンパ浮腫外来では、どのような診察をされているのですか?
認定看護師さんが対応してくれました。むくみの大きさを測ると左右で違ったので「弾性ストッキングを買いましょう」と提案され、圧迫療法を始めることになりました。
いいですね。私が通っていた病院にはリンパ浮腫外来なんてありませんでしたし、リンパ浮腫を診られる医師もいませんでした。ずっと違和感を感じていて、形成外科の先生に相談したんですが、「見た感じ大丈夫そうですね」と軽く流されてしまって…。
術後の副作用までしっかり診てくれる医師って、少ないのかもしれませんね。
本当にそう思います。「もしも、あまりにも見た目が変わってきたら別の病院を紹介しますよ」という感じでした。
私たち患者からすると、見た目が明らかに変わってから診断されるんじゃ、日常生活が大変になるだけなのに…。
そうなんです。それでも手の違和感が取れなくて何度も訴えたんですが、「まだ大丈夫そうですね。様子を見ましょう」と取り合ってもらえなくて…。
それでご自身でリンパ浮腫を診てくれる病院を探されたんですか?
はい。ネットでいろいろ調べているうちに、がんサバイバーのコミュニティを見つけたんです。そこが主催するセミナーを受講してみたら、講師の先生のお話が本当に分かりやすくて。「いやっまさにそうだよ!」ってすごく感銘を受けました。それで「この先生に診てもらわないと!」と思って、形成外科の主治医の先生に紹介状を書いてもらって、すぐ予約を取りました。
私も鶴田さんと一緒でリンパ浮腫のセミナーに参加して、リンパ浮腫に関する知識が豊富で患者さんたちからの信頼もあった先生に出会うことができました。
朝香さんはその先生にリンパ浮腫と診断されたんですか?
いえ、リンパ浮腫の診断自体はがんの主治医の先生から受けました。その後、同じ病院内の形成外科で診ていただけると聞いて受診しました。
どんな診察を受けましたか?
特に詳しい検査はなく、サイズを測ったり触診したりもありませんでした。ただ、「サポーターを購入してください」と言われて、入院中に教わったマッサージを続けるように指導されただけです。
その後、症状は良くなりましたか?
それが…少し無理をしたら、手の甲まで腫れてしまったんです。「これはまずい」と思っていた時に、セミナーの開催を知りました。
情報の力で広がる
リンパ浮腫ケアの選択肢
がん治療が有名な病院というのは、調べればたくさんあると思うのですが、術後の副作用について、例えば「リンパ浮腫ならこの病院が有名」「しっかり指導してくれる」「手術も受けられる」といった情報は、探すのが難しいですよね。
そうですよね。がんと診断された時点では、リンパ浮腫のことなんて考えていませんでしたし、実際に発症するのは2、3割くらいと聞いていたので、まさか自分が当てはまるとは思いませんもん。
そうですよね。私は、手術を受けた病院のリンパ外来で診てもらってはいたんですが、ちょっとずつ悪くなっちゃって。マッサージのやり方も、どれくらいの力でやればいいのか全然分からなくて…。エステでの施術はダメと聞いていたので、看護師さんに信頼できるマッサージをしてくれるところを何箇所か挙げてもらいました。その中で家から一番近いサロンに通っています。
やっぱり、病院では対応が難しい部分もありますよね。
そうなんです。リンパ浮腫もどんどん情報が更新されているので、主治医や看護師さんにすべてを求めるのは難しいのかもしれません。
だからこそ、専門的に診てくれる施設があると本当に助かりますよね!
はい! 私の通っているサロンでは今の私の状況を丁寧に診て、それに合った情報をくださるので、だいぶ楽になりました。
近くにそういうサロンがあるなんて、羨ましいです。
私も術後に病院で教えてもらった一般的なマッサージの方法ではなく、リンパ浮腫専門のサロンで個別対応の指導を受けました。それぞれ手術の跡や腫れ方が違うので、それに合った方法を教えてもらえたのは本当に助かりました。松田さんが言うように、やっぱり情報って大切ですよね。私なんて、サロンで「LVA(リンパ管静脈吻合術)」という手術があると聞いて、形成外科の先生に「こんな手術があるんですよ」と話してみたんです。すると「うちでもやっていますよ」ですって!
えーっ!それはびっくりですね(笑)。私がリンパ浮腫を発症した12年前は、今よりも情報が少なくて、とにかくネットでひたすら調べるしかありませんでした。
川田さんが当時たどり着いた情報や、そこからどのように治療を進めていったのか、後半でぜひ詳しくお聞かせください!
後半は後半では、川田さんが13年間どのようにリンパ浮腫と付き合ってきたのか、皆さんが興味のあるLVA手術について、日常生活での困りごとあるあるを聞いていきますのでお楽しみに♪
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