「更年期」ってよく聞くけれど、いったいどんなふうに始まって、どう終わっていくの?更年期世代の見えにくい心や体の変化について、50代女性が経験談を語り合いました。
前編では、体や心の不調、生理の変化、婦人科との向き合い方を中心に、それぞれの経験や思いを聞かせていただきました。
参加者の自己紹介

松本 遥さん(仮名・51歳)/自営業
40代後半から体の不調を感じはじめ、最近は少しずつ落ち着いてきたものの、まだ体調の波を感じることがある。病院にかかったことはない。

上沢 晃子さん(仮名・56歳)/会社員

福田 ゆりこさん(仮名・52歳)/会社員
40代前半から更年期の症状を意識するようになり、更年期障害と診断される。現在もホルモン療法を受けながら日々の体調と向き合っている。婦人科を受診。

進行役:上野 さくらさん(仮名)・40代
最初の“サイン”はバラバラにやってくる
「これって更年期?」と感じた最初のきっかけって、皆さんどのようなものでしたか?
私の場合は、40代後半。ちょうど新型コロナが流行りはじめた頃で、私も感染して…。いろんな要因が重なって、じわじわと体調の変化を感じるようになりました。
朝がつらくて起きられないし、体も重だるい。汗をかくほどではないけれど、内側からカーッと熱くなる感じが何度もあって…。まるで暖房が効きすぎた部屋にいるような、不快な感覚でした。
そうした熱がこもるような不快感って、周りの人には、なかなか伝わらない感覚かもしれませんね。
そうなんですよ。「ホットフラッシュかな?」と思ったけれど、当時は更年期か疲れか分からなかったです。ただ、10年前と比べて、明らかに体が動きにくくなっていて…。日常の中で、ちょっとした“不自由さ”を感じるようになっていきました。
私も同じく、40代後半から少しずつ変化を感じていました。
どんな症状でしたか?
仕事が忙しかったのもあって、疲れなのか更年期なのか、自分でもよくわからなかったんです。夜中の2時ごろに目が覚めてトイレに行く、というのがしばらく続いて。ちゃんと眠れない日が多かったですね。
それから、松本さんも言っていたようにホットフラッシュも。周りは「暑くないよ?」って言うのに、私だけ汗が止まらないんですよね。会社でも1人だけ「暑い、暑い」って言っていました(苦笑)。そんな状態が数年続きました。
私は43歳のとき、ホットフラッシュから始まりました。
43歳だと、少し早い印象ですね。
そうなんです。朝の調子が悪い、疲れがとれないっていう感覚は前からありましたが、「年齢のせいかな」程度に思っていて。子どもが高校生で朝早く起きなきゃいけなかったので、寝不足かと。
でも、どんどん朝がつらくなって、気分も沈みがちに。ある日、突然汗がドッと出るようになって「これはおかしいぞ」と。
わかります!汗が止まらない。更年期あるあるですよね(泣)。
ね(笑)。それで婦人科に行ってみたんです。でも43歳って早めだからか、最初は「気にしすぎじゃない?」って先生に言われました。でも血液検査をしてもらったら、卵巣の機能が落ちていて…更年期の症状だと診断されました。
私も「これって?」と思うことがいくつかあって。たとえば朝、指がこわばって痛かったんです。リウマチかもと心配して病院に行ったら、「30分以内に改善するならリウマチの可能性は低い」って。でも、今思えばあれも更年期のサインだったのかなって。
いろいろな症状が出ても、「あ、更年期かも」って、すぐには思えないですよね。
ほんとに。体のあちこちに不調が出て、それぞれ別の原因かと思っていたけど、あとから振り返ると「もしかして全部つながってたのかも?」って気づいたりするんですよね。 逆に言えば、「これが更年期です」とひとことでくくるのは難しい。それくらい、さまざまな症状、個人差があるんだなって感じました。
気づかぬうちに心も揺らいでいた
更年期には身体の変化と同じように、精神的な不調を感じる方も多いようです。みなさんはどうでしたか?
私の場合、これといった理由があるわけじゃないんですけど、「なんだかやる気が出ないな…」と感じる日がありました。何をするにも億劫で、動けない日もあって。
でも、同じように更年期で悩んでいた知人が、「ある日ふっと、霧が晴れたようにラクになった」って話してくれたんです。それを聞いて、「今は無理に頑張らなくていいのかも」と思えるようになりました。
私も更年期の症状が出たとき、正直ショックでした。 頭では「そういう年齢なんだ」とわかっていたつもりだったんですけど、実際に自分に起こると、気持ちがついていかなくて…。
40代後半から50代って、ほんとにデリケートな時期ですよね。
体調の変化だけじゃなくて、仕事では責任が増えたり、親の介護が始まったり、子どもが独立していったり…ライフステージとしても、いろんな変化が重なってくる時期。
だから余計に、心も揺れやすくなるのかもしれません。
たしかに。身体の不調に目が向きがちな更年期ですが、心の揺らぎも少しずつ、気づかないうちに始まっているのかもしれませんね。
40代、生理はどう変わっていった?
更年期のサインとして、まず最初に「生理の変化」に気づく方も多いですよね。周期が乱れたり、量が変わったり… みなさんは、どんなふうに変化を感じていきましたか?
私の場合、生理が不安定になったのは、45歳のときでした。ちょうど子どもが進学で家を出て、生活環境がガラッと変わった頃です。今振り返ると、ストレスも影響していたのかもしれません。最初は「最近来ないな…」ぐらいの感覚で、2〜3ヶ月空くこともあれば、来ても少量ですぐ終わってしまう。リズムも量もバラバラで、「あれ?」とは思いつつ、まさか閉経とは思っていませんでした。
私も40代後半から周期が不規則になっていきました。福田さんと同じように、2〜3ヶ月来なかったかと思えば、次は1ヶ月ダラダラと続いたり…。 そんな状態が1〜2年続いて、「ああ、もしかしてそろそろ終わりが近づいているのかな」と意識し始めましたね。
私は50歳ごろに終わりました。でも、「これが最後」とはっきりわかったわけじゃなくて、じわじわとフェードアウトしていった感じです。 最後の頃は本当にごく少量で、1日で終わるような日が続いていました。 それが数ヶ月空いて、ある日「あれ?少し下着が汚れてる?」という程度の出血があって…。 「また来るのかな」と思っていたけど、それが最後でした。
“終わり”が突然くるというより、「いつの間にか終わっていた」みたいな感じなんですね。
婦人科、行きましたか?
──不調との向き合い方と“受診”という選択肢
みなさん、更年期の不調に対して病院を受診されましたか?
私は、生理が不安定でホットフラッシュの症状があったので、44歳で産婦人科を受診しました。 医師からは「この年齢で生理が終わるのは少し早すぎる」と言われて。骨粗しょう症や子宮がんなどのリスクを考えると、あと10年くらいは女性ホルモンを補いながら、“擬似的に” でも生理を起こしておいたほうが体には良い、と説明を受けたんです。 それ以来、女性ホルモン(プロゲステロン)を処方してもらい、定期的に生理(出血)を起こす治療を続けています。
どんな検査をされたんですか?
血液検査です。生理が止まっていてもホルモン値に問題がなければ、治療は必要ないのかもしれません。でも私の場合は数値がかなり低くて…。 だから、薬で補いながらコントロールする必要があったんだと思います。
治療に踏み出すまでに、不安や迷いはありませんでしたか?
すごくありましたよ。実は産婦人科を3つもまわったんです。 先生によって全然考え方が違っていて…。私は性格的に、納得して選びたいタイプ。ある意味「自分の体で実験している」ような感じで(笑)。 ある先生は「つらくなければ治療しなくていい」、別の先生は「たとえ自覚症状がなくても、定期的に検査をして数値を見ながらホルモンを補ったほうがいい」、また別の先生は「数値でコントロールすること自体に意味はない」とおっしゃって。
同じ更年期の治療でも、医師によってアプローチが違うんですね。
本当にそうなんです。どれも一理あるだけに、すごく悩みました。 でも最終的には、自分の身体と向き合って、自分で納得できる方法を選ぶことが大切だなって思います。
ご自身の不調と向き合いながら、試行錯誤されてきたんですね。
はい。さらに、子宮筋腫も複数あって、それもまた悩ましいんです。若い頃は生理不順もなく、寝込むほどのつらさもなかったので「更年期もきっとふわっと始まって、ふわっと終わるんだろう」と軽く考えていました。 でも実際には、薬が合わなかったり副作用が出たり…。思っていたよりずっと大変で、「自分のホルモンって、なんて扱いにくいんだろう」って思うこともあります。今もなお試行錯誤しながら、自分なりのペースでつき合っています。
今って婦人科の薬もいろんなタイプがありますよね。塗り薬、貼り薬、飲み薬…選択肢がすごく増えました。もっとゆるやかなものだと、漢方もあるし。私も「自分に合うものを見つける」ことが大事だと思います。 でも更年期って“病気”じゃないからこそ難しくて。痛みがあれば「病院に行こうかな」って思えるけど、私みたいに生理が軽かったタイプだと、「まぁ年齢的なものかな」ってスルーしがちなんですよね。 そういう意味でも、“受診しよう”という意識が持ちづらかったのかなと、今は思います。
本当にそうですね。私も、行こうと思って産婦人科に電話したんですけど、「1~2ヶ月先になります」と言われて…そのまま行きそびれてしまって。 婦人科って、予約が取りづらいというハードルもありますし、「どのタイミングで行ったらいいのか」も、わかりにくいですよね。
こうしてみなさんの話を聞いていると、更年期との向き合い方は本当に人それぞれなんだなと感じます。 でも、だからこそ、たとえ自覚症状が軽くても、将来の骨粗しょう症やほかの病気のリスクを考えると、「まずは相談だけでも受診してみる」という選択が自分の体と向き合う大事なきっかけになるのかなと思いました。
後半は後半では、「出産が大変だった人は更年期症状が重いってホント?」「周囲との関わり方」についてお話をお聞きしました。更年期で悩んでいる方へのメッセージもありますので、お楽しみに!