(後編)第2回 がん経験者座談会☆~がん治療とお金のこと~

がん治療とお金の座談会、前編では、治療費の支援制度や主に支出に関するお話でした。後編では、さらに収入が減ってしまう不安やがん保険について、そして病気を経験したことで変化したお金の価値観について、参加者の皆さんに語っていただきました。

参加者の自己紹介


中谷ミカさん(仮名)・40代
乳がん:2年生
治療内容:EC療法(エピルビシン、エンドキサンの2種類の抗がん剤を組み合わせた治療法)4回とドセタキセル4回。放射線療法。

「私は、トリプルネガティブの乳がんで、右胸全摘手術を受けました。診断を受けた当時は、ステージIで、転移も見られなかったため、リンパはそのまま残して摘出のみの手術でした。ですが、術後1年の定期検診でリンパに転移が見つかり、リンパを取る手術を受けることに。転移が分かっても手術待ち期間があり、術前に1回と術後に7回、計8回の抗がん剤治療を受け、現在、放射線治療中です」


セシリアさん・50代
卵巣がん:12年生
治療内容パクリタキセル+カルボプラチン3週に1回というレジメンでスタート。

「卵巣がんと診断された時、私はステージIIICでした。お腹の中にがんが散らばり、かなり進行していて、腹水も6リットルたまり、臨月のようなお腹でした。私は腫瘍が大きく腹膜播種もあったことから術前抗がん剤治療から始めました。パクリとカルボを3回打ったところで腫瘍が縮小したので根治手術後にも同じ薬を3クール 抗がん剤は全部で計6クール実施しました。治療卒業後、今まで再発はありません」。


北川まゆみさん(仮名) ・60代
子宮体がん:2年生
治療内容:抗がん剤治療 DC療法。パロノセトロン、ドセタルキセル、カルボプラチン

「私は去年、子宮体がんの手術をしました。がんが見つかったときはステージIでしたが、手術をしてみたらステージIIになっていたので、抗がん剤治療を6回受けました。かなり副作用が酷くて辛かったです。先生に相談しながら薬を変えていただいて、なんとか治療を続けることができました。まだ髪の毛が十分に生えていないので、帽子をかぶって生活をしています。」


進行役:上野さくらさん(仮名) ・40代
乳がん :6年生

実際に利用した
収入を支える制度

前回は、手術費や治療費に加えて、退院後にかかる意外なお金の話をしていただきました。さらにお金のことで不安になるのが、仕事を休まざる負えないため、収入が減ってしまうことではないでしょうか?

そうですね。私たちは夫婦ともに自営業です。私がお休みの間は、知人にお店を任せていました。手術代や治療費はがん保険と高額療養費制度でカバーできましたが、お店の売上からその方に給料を支払っていたため、通常の収入よりも減少しましたね。

自営業だと自分が休んだ分、他の方に経営を任せないといけない辛さがありますよね。一方、会社員の立場では、また異なる悩みがありそうですが、中谷さんは会社員として給料面で困ったことはありましたか?

私の場合は、「傷病手当金としてお給料の6割支給されるから、無理して働かなくてもいいんだよ」と、会社が提案してくれました。だから、手術の前後2ヵ月ぐらいお休みしました。

とても親切な会社ですね! 私の場合は、実際には傷病手当金を受け取る資格があるにもかかわらず、「あなたは対象外です」と会社から言われました。

そんなことがあるんですか?!

私が、がんと診断されたのが、ちょうど退職する月と同じで、稀なケースでしたが…。会社の人事担当者もあまり詳しくなくて、本当に傷病手当金の対象外なのか自分で調べてみたんです。

それでセシリアさんは制度に詳しいんですね!

必死にいろいろ調べましたから。傷病手当金も調べた結果、対象者だとわかり、支給を受けることができました。傷病手当金の受給には細かな要件があり、人事の方も解釈を間違えたみたいです。

制度関係はどれもわかりにくいですよね…。

私は、傷病手当金が切れた後は、失業保険を受給することができました。

失業保険ももらえたんですね。

この失業保険で意外に知られていないのが、「働きたいと思っても、心身ともに健康ではないと受けられない」ということ。

それは知りませんでした。

私も知らなくて、退職したら失業保険でしばらく生活しようと思っていました。ところが、1回目の抗がん剤を投与してから、関節痛などの副作用でフラフラしている状態でハローワークに行くと、「あなた、そんな状態で働けるんですか? 失業保険は働く意思と能力がある人じゃないと支給できないんですよ」と言われ、ビックリ。
病気で退職した人が辞めた途端に、健康で退職した人よりも経済的に不利な立場に置かれてしまうのはおかしいと思って、これも自分で調べて雇用保険の「延長申請」の手続きをしました。

がんと診断されて、びっくりして退職される方が多くいると聞きますが、そのあたりのことを知っておくとよさそうですね

私はお店で働いていたので、体力的に店頭に復帰するのが難しいため、会社にダメもとで部署異動の相談をしました。すると、在宅で仕事ができる部署への異動が叶いました。

よかったですね!

手術のときは傷病手当金を受けましたが、仕事を続けながら治療を受けたかった理由の一つはやっぱり、収入が減ることへの不安です。

収入は減るのに、生活費プラス治療費がかかりますからね。

そう。いつ終わるのか期限のわからない治療で傷病手当金をもらうとなると、私の病院の場合、復帰の際に休んだ期間分の申請をすることになります。そのため、休職中は事実上、給与を得られない状態が続いてしまうのです。
私が傷病手当の申請した時期は、コロナウイルスによる申請ですでに立て込んでいて、手続きの処理が遅れるため、支給までに半年以上はかかると言われたんです。

病院や会社、地域によって申請や支給時期は変わってきそうですね。独身でお仕事をされてて、自分で生活を営んでいる人にとっては、毎月の給料がなくなるのは恐怖ですね。

恐怖でしかないです(泣)。治療費はかかるのに給料をもらえないとなると、どんどん家計がマイナスに。だから貯金を切り崩すしかなくて。

そのために貯金していたわけじゃないのにね(泣)。

そうなんです! それが本当に悔しい。私、病院代払うために働いていたの?という感じで。

「がん保険に加入しているから安心」と思っていたら…

みなさん、がん保険には入られていましたか?

私は入っていませんでした。前にもお話しましたが、告知後、何百万、何千万かかったらどうしようとゾッとして、医療に詳しい友人に相談すると、「今は高額療養費制度があるから大丈夫」と教えてもらい、国の制度をフル活用して治療を受けています。

私は父が被爆者で、且つがんで亡くなっているので、がん保険は若い頃から加入していました。傷病手当金や失業保険と併せて利用することで、なんとか乗り越えることができました。

私もがん保険に入っていたので、国の制度と併せて、そこまで医療費には困らなかったです。ただ、びっくりしたことがあって…。

なんですか?!

保険会社の担当の人に「北川さんが加入しているがん保険は、一度しか給付されない保険ですよ」と言われたんです。「ん? そうだったかな?」と私の記憶も曖昧だったので、再発のことを考えると、それだけで頭がいっぱいになって怖くて仕方ありませんでした。

それは不安ですね。

今、がんに罹っても入れる保険もありますが、加入条件のハードルがすごく高い! これで加入できる人いるのかな? と思うぐらい。

しかも、1回罹っているので、掛け金が高額で掛け捨なんですよね。

それは、保険金を払い続けた方がいいのか、それとも貯金をした方がいいのか悩ましいですね。

まさに、そのことで悩んでいると保険の担当者から連絡があって、1回しか給付されないというのは間違いで、2年に1回は使える保険でした、と。

ひどい話ですね。最近は条件緩和型の保険もありますが、私の体験に照らしてみたら、治療のニーズに全然あってないなと感じました。

おっしゃる通りで、掛け金が高い割には、再発したときにでる補償が伴ってない感じはありますね。とはいえ、これは私の考えですが保険は加入していたほうが心強いですね。

保険はお守り程度の金額ならいいですけど、それが生活費を圧迫してくると貯金とどっちがいいのか、正直迷いますよね。また、加入している人も、契約内容を今いちど確認しておいた方がよさそうですね。

「発想の転換」で
今を大切にしたい

最後に、みなさんは何を支えに闘病を乗り越えられたのですか。

私はがんに罹って、本当にクヨクヨしていました。いろいろな人の支えがありましたが、料理家の桧山タミさんの「クヨクヨする時間はもったいない」という言葉が私を救ってくれました。生きる力をもらって、いかに楽しく生きるか、クヨクヨする暇はないんだと自分に言い聞かせるようになり、そこからすごく気持ちが切り替わりましたね。桧山タミさんのカレンダーは今も飾っています。

本当に周囲の支えに助けられています。あとはやっぱり発想の転換。当たり前のことですが、死ぬまでは生きているから。その間失ったものについて考えたり、この先どうなるんだろう、いつ再発するんだろう、いつ死ぬんだろう、そういう心配をしていても再発する時はするよなぁと思うようになったんです。

よくわかります! どうせ与えられた時間は同じなので、その時間をできるだけ楽しく過ごそう、やりたいことは全部やってやるぞって思うようになってきますよね。

そう、何をしたいか、何を食べたいか、何を着たいか、どんな髪型にしたいか―そんなことを考えていると、忙しくて再発や死を考えている暇は無く、結構楽しいものです。
もちろん、お金の心配はあります。現実的な心配事はたくさんありますが、いろんなことに感謝して、「今日食べたお菓子が美味しかった」とか、それだけでも幸せになっちゃう。

私も同感です!残された時間は、たとえばあと5年かもしれません。あるいは2年かもしれない。そう考えると、これまでやりたいと思って我慢していたことでも、時間が限られているのならば、逆に挑戦してみようという気持ちになります。

それが発想の転換ですね。

今、本来お金を使ってはいけない時期なのにずっと欲しかったパソコンを買ってしまいました(笑)。

そうそう! 「いつか」と思っていたことを「いま」する。

健康なときは、老後の心配もしていました。今は、「おばあちゃんになれたらラッキーじゃん!」と思っています。おかしいかもしれないけど、落ち込む暇がないというか、やりたいことを今のうちにやらなければという考えに変わりました。

がんになると本当にお金がかかります。しかし、お金の心配をしながらも、心が満たされる使い方をされている様子も伺えました。皆さんの経験が次につながり、よりよい方向に向かいますように。

記事に掲載されている制度や条件などは、記事が作成された当時のものです。

 

座談会を終えて傷病手当金はお勤め(=自営業でない)人が病気をしたとき、派遣(がん年齢の女性はこの雇用形態も多い)の方でも使える特に大切な情報であるにも関わらず、受給要件について誤解も多く、また改正があって運用も変わっているみたいです。常に情報をアップデートする必要がありますね。

 

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