がんの告知を受けたとき、そして治療が始まったとき――。
次々と押し寄せる不安や葛藤のなかで、どうやって気持ちを保ち、前を向くことができたのか。
今回は、「治療中に心の支えになったこと」について語っていただきました。
皆さんの「これがあったから乗り越えられた!」を聞くと、不安な気持ちも少し軽減して、前を向くヒントが見つかるかもしれません。
参加者の自己紹介

玉田 アンさん(仮名)・40代(発症年齢:30代)
35歳(当時、子どもが0歳と4歳)で乳がん告知→抗がん剤治療→全摘→放射線治療→ホルモン療法継続中。40歳でBRCA検査を勧められ、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と診断され、これから卵巣摘出を進めていくところ。
病院に行くきっかけとなった症状:
娘が生後6ヶ月のときに乳がんの告知を受けました。授乳中は胸の張りもあり、まったく気づかなかったんですが、断乳して張りがなくなった時、そこで初めてしこりを感じたんです。
「妊娠中や授乳中は腫瘍の進行が遅い」と聞いたことがあったので、まさかその間に進行していたなんて……本当に驚きました。

髙山 理恵子さん・60代
病院に行くきっかけとなった症状:ふと左胸に硬いものを感じ、「えっ、何これ?」と触ってみたら、マッチ箱くらいの大きなしこりがありました。でも、「認めたくない」という気持ちが強くて……。ちょうど定期検診の時期だったので検診を受けたところ、精密検査を勧められ、大きな病院を紹介されました。
そこで詳しい検査をする前に、医師から「これ、乳がんですね」とサラッと言われてしまって……。進行が早そうとのことで、週に2、3回のペースで検査を受けていたら、途中でコロナに感染。でも幸い、がんの進行はそこまで進んでおらず、手術を受けて、つい1週間前に退院したばかりです。

堀田 美優さん(仮名)・40代
病院に行くきっかけとなった症状:下腹部がなかなかへこまないことに、ずっと違和感はありました。
そこで、かかりつけの内科を受診した際に、血液検査のついでにお腹の調子も相談してみました。すると、「内科の領域ではない」とのことで、大きな病院を紹介され、簡易CTを受けることに。その結果、なんと腹水が2kgも溜まっていることがわかったのです。
さらに、卵巣がんも発覚。当時、腫瘍が大きく、小さくしないと手術ができないからと、まずは抗がん剤治療を受けているところです。当初、子宮全体ががん化し、卵巣は10センチ大でしたが、現在は卵巣腫瘍7センチ程度になっています。

進行役:上野 さくらさん(仮名)・40代
乳がん8年生、血液がん6年生
予期せぬ出来事に揺れる心
がんと診断されてから、さまざまな不安や葛藤があったと思います。まずは、その時のことをお聞かせいただけますか?
告知を受けたとき、子どもがまだ0歳と4歳だったので、頭の中は子どものことでいっぱいでした。
私が告知を受ける少し前に、タレントの小林麻央さんの訃報がニュースで流れていて…。彼女も私と同世代で、小さなお子さんが2人いて。「あんなに小さい子を残して旅立つなんて、かわいそう」と思っていたら、まさか自分も同じ立場になるなんて――。
共通点も多かったことから告知されるまでは、“死”と直結するような気持ちになっていました。
あのニュースは、とても衝撃的でしたね。同じような境遇だと、どうしても重ねて考えてしまいますよね。
そうなんです。だから、検査を受けてから告知までの2週間は、本当に地獄のような時間でした。
「まだ断乳したばかりだから、乳腺炎なはず。きっと大丈夫」って自分に言い聞かせて。でも、医師の慌てた様子を見ていると、やっぱり乳がんかもしれない。そんなふうに、気持ちが揺れ続けていました。
食事も喉を通らず、2週間で5kgも痩せてしまって。振り返ると、その期間が一番つらかったですね。
自分ががんだと認めたくない気持ちよくわかります。私も、まさか乳がんなんて思いたくなくて、乳腺炎のひどい状態くらいだろうって。でも、大きい病院を紹介されると、不安がどんどん大きくなりました。
みなさん同じですよね。
私の場合は、告知は「あなた、乳がんです」って、あまりにもサラッと言われて。その瞬間は、「そうか」って受け止めたんですけど、診察室を出た途端、涙が止まらなくなって…。もう60歳になるけど、やっぱりショックでしたね。
告知の瞬間のショックは、年齢や性別に関係なく、本当に大きいと思います。
私は、薬が効かなかった時期がとても苦痛でした。抗がん剤についての知識が全くなくて、ネットで調べるくらいしかできなかったんです。でも、ネットには怖い副作用の話ばかりが目につくし、先生も、こちらから質問しないと詳しく説明してくれないことが多くて…。
確かに、情報を得ようとすると、ネットでは不安になるような話ばかり目についてしまいますよね。しかも、先生が一つひとつ丁寧に説明してくれるわけではないから、余計に不安になりますよね。
そうなんです。薬が効かないと、 私「次はどういう薬になるんです?」 主治医「こういう薬ですよ」 私「でも、それが合わなかったらどうするんですか?」 主治医「また別の薬にしますよ」 こんなやりとりの繰り返しでした。
今になって思えば、治療は、一歩ずつ様子を見ながら進めていくものだと分かります。でも、当時は不安が大きすぎて、「こんなにどれも合わなかったら、もうどうしたらいいの……」と、どんどん気持ちが沈んでいきました。
治療の選択肢があるのは心強いことだけれど、当時は“どの薬も効かないかもしれない”という不安が大きかったんですね。
はい。それに、ちょうど夏の暑い時期に、体を消耗させる薬が重なって、ますます動けなくなりました。さらに、お腹の調子も悪くて、お尻の傷がなかなか治らず、座ることすら辛かったんです。
病気になると、それまでの生活が一変してしまいます。体のつらさだけでなく、気持ちの面でも大きな負担になりますよね。
そうなんです。もともと旅行が好きで、アクティブに動いていたのに、それができなくなり、家にこもる日々。誰とも話すことがなくなって、フラストレーションがたまる一方でした。
副作用が重なると、本当にしんどいんですよね。
主人が仕事から帰ってきて、話したい気持ちはあったんです。でも、私の状況を心配させたくなくて…。もともと心配性な人なので、私がつらそうにしていたら、さらに気にしてしまうだろうなと思うと、つい自分の気持ちに蓋をしてしまっていました。
ご家族に心配をかけたくないという気持ち、すごく分かります。
皆さん、それぞれ大きな不安や葛藤を抱えながら治療を続けてこられたんですね。告知のショック、治療への不安、思うようにいかないもどかしさ……。お話を聞いていると、その苦しさがひしひしと伝わってきます。
落ち込んでも大丈夫!
私の支えになったこと
そんな不安な状態で、治療と向き合わなければいけない時、皆さんの心の支えになったことはどんなことですか?
いざ「乳がんです」と言われた瞬間、診察室で涙が止まらなくて…。先生に「まだ死にたくないんです」って泣きながら伝えました。
私のがんは悪性度が高かったこともあり、先生は「私たちもできるだけ治療を急ぎます」と言ってくださいました。そして、そのとき先生がこう言ったんです。
「まずは2週間!2週間頑張りましょう。2週間経ったら気持ちが前を向くから!これはね、今まで多くの患者さんを見てきて、みんなそうなってきたから」
2週間……。それくらいなら頑張れるかもしれない、って思えますね。気持ちがずっと沈んだままじゃなくて、前を向ける日が来るって言われると、少し安心できます。
そうなんです。多くの患者さんを診てこられた先生から、そういう言葉を頂いて、すごく励みになりました。「あと、何日頑張ればいい」って思う事ができました。
それから先生は、「眠れないなら睡眠剤を出すから、とにかく寝て。食事もしっかり摂ってね」と続けて言ってくれて。私も言われた通り、毎日睡眠剤を飲んで、とにかく寝ることを心がけました。
やっぱり、ちゃんと寝て、ちゃんと食べるって大事ですよね。でも、そんな気持ちになれないときに、先生が背中を押してくれるのはありがたいですね。
本当にそうでした。すると、2週間くらいで、「もう、やるしかないな」っていう気持ちに変わったんです。最初は絶望感しかなかったのに、気づけば治療に前向きになれていました。先生が言っていたことは本当だったんですよね。
先生の言葉に支えられたんですね。「まずは2週間」っていう具体的な期間を示してくれたことで、乗り越える目安ができたのかもしれませんね。
私も、主治医の対応の速さには本当に助けられました。そして、何より心の支えになったのは、主人が病院に必ず付き添ってくれたことです。「絶対に俺を残していくな。大丈夫やから」って、力強く言ってくれました。
入院中も毎日来てくれて、主人だけには「めっちゃ痛い!」っていうのをいつも言っていました(笑)。そしたら「頑張れ!頑張れ!」って励ましてくれて。手術が終わったときも、「よう頑張ったな」って言ってくれました。
素敵なご主人ですね!
はい、主人の支えがあったから、なんとか乗り切れた感じですね。
そばにサポートしてくれる人がいてくれると心強いですよね。私も母がフットワークが軽い60代だったので、子どもたちを連れて大分の実家に帰って、私に1人の時間をくれたり、母が福岡まで来てくれて、通院を手伝ってくれたり、ご飯を作ってくれたり、本当に支えてもらいました。
主治医も化学療法室の看護師さんも、みなさんとても優しくて。先生はこちらが心配になるくらい、じっくり話を聞いてくれるんです。だからこそ、予約時間より待つこともあったんですが、「あぁ、今、先生は他の患者さんの話をしっかり聞いているんだな」と思うと、待ち時間すら苦になりませんでした。
先生が親身になってくれると、患者さんが安心して話せるから、どうしても時間がかかるんですよね。
そうなんです。看護師さんもいつも「なにか心配事ないですか?」「変わったことないですか?」って、気にかけてくれて。たったそれだけのことなんですけど、それがすごくありがたくて。「私は一人じゃないんだ」って思えるだけで、気持ちが全然違いました。
病院のスタッフの方々が、ただ治療するだけじゃなく、気持ちにも寄り添ってくれるのは、本当に心強いですよね。
私は治療が本当に辛かったんですが、3回目の薬は、それまでのものより体への負担が少なかったんです。退院した翌日、ちょうど博多の祇園山笠があっていて。ずっと見てきたお祭りだったので、思い切って見に行ってみたんです。そしたら、お祭りのエネルギーがすごすぎて圧倒されてしまって(笑)。きつかったけど、なんだか気持ちが発散される感じもあって、久しぶりに楽しいと感じました。
お祭りの熱気って、すごいパワーを持っていますよね。やっぱり、好きなことに触れると気持ちも変わりますよね。
そうなんです。自分の好きなことを少しでもできるって、すごく大事なんだなぁと実感しました。それまでは本当に動けなくて……。体が資本だなって、改めて痛感しました。やっぱり、体が弱ると心も弱るんですよね。
それ、すごく分かります。体調が悪いと、どんどん気持ちまで沈んじゃいますよね。
あと、口内炎がひどくて辛かったんですけど、それも徐々に落ち着いてきて、食べられるものが少しずつ増えていったんです。それだけでも、すごく気持ちが楽になりました。
食べることができるって、やっぱり元気に直結しますよね。
はい。 しかも、3回目のお薬になって、脱毛していたのが一気に戻ってきたんです。いきなり、毛穴という毛穴から「生きてる!」って感じで毛が生えてきて(笑)。顔のうぶ毛とかもすごいことになりました。
一気にですか! でも、それってすごく嬉しいですよね。体がちゃんと生きようとしているんだっていうのが、目に見えて分かるというか。
そうなんですよ! それを見たとき、「あぁ、私の体は生きようとしてるんだ!」って強く感じました。細胞レベルで活性化してるのを感じて、すごく嬉しくなりました。
これがあったから乗り越えられた!
皆さん、それぞれ大変な時期を乗り越える中で、支えてくれた人や言葉があったんですね。
でも、ふとしたときに気持ちが沈んだり、不安になったりすることもあったと思います。そんなとき、音楽や本など、何か力をもらえたものはありましたか?
告知を受けたとき、本をすごく読みあさりました。その中でも特に読み込んだのが、100人ものがん患者さんの経験談を集めた「乳がんと診断されたらすぐに読みたい本」という本です。
自分に症状が近い人を探したり、同じステージの人の治療方法を比べたりしました。でも読んでいるうちに、「がんの種類も、治療の仕方も、患者さんの年齢や背景も、本当に十人十色なんだな」って気づいたんです。そこで、「自分なりの方法を探していこう」って思えるようになりました。
何度も読むことで、「自分なりの方法を探していこう!」と前向きになれた1冊
他の人がどういう体験をして、どう乗り越えたのかって、すごく気になりますよね! 私も、がん経験者で俳優の古村比呂さんのYouTubeチャンネルをよく観ていました。
ネットで情報を探すと、どうしてもネガティブな話ばかり目に入ってしまって……。「あ、これは見ちゃダメだな」って思って避けていたんですが、古村比呂さんのような有名な方の発信なら安心して見られるかなと思って。
情報をどこから得るかって、本当に大事ですよね。私は音楽にも助けられました。ずっと菅田将暉さんの「まちがいさがし」を聴いていました。
私もその曲よく聴いていました!
今も聴くと、当時のことを思い出します。
私もいろんな人の経験談を読んで、結局、「自分にとって一番いいことをしよう」と思うようになりました。それで、私は韓国アイドルの推し活にハマってました(笑)。
いいですね!ちなみに、どのグループですか?
「EXO」です♡最近は、カラオケ仲間ができ、沢山歌ってストレス発散しつつ楽しんでいます。
推しかつ最高☆(画像提供:堀田さん)
私は5歳になる孫が栃木にいるんですが、すごく可愛くて! 子どもって、なんとも言えないフワフワでプクプクしていて、触れているだけで心地よくて癒されるんですよね。
わかります! 子どものエネルギーって、本当に励みになりますよね。
それから、入院中はウィッグをつけないから帽子が必要で。私はハンドメイドが好きなので、自分で帽子を作りました。好きなことに集中していると気持ちが落ち着くし、作る時間そのものが私の精神安定剤になってたかな。
すごくオシャレな髙山さん手作りの帽子とご主人に買ってもらったスヌーピーのぬいぐるみ(画像提供:髙山さん)
病気だからと諦めるのではなく、「今できること」「少しでも自分が心地よくいられること」を大切にする——。
それが、心を支え、前に進む力になるのだと、皆さんのお話から強く感じました。 不安や葛藤を抱えながらも、支えてくれる人や言葉に出会い、自分なりの楽しみや癒しを見つけていく。その小さな喜びの積み重ねが、「乗り越える力」につながっていくのかもしれません。
後半は後半では、がん治療の過程で、「このタイミングでこんな情報があればよかった」「周りの人にこう声をかけてもらえたら嬉しかった」。そんなリアルな経験を語っていただきます。また、がんになったからこそ気づけたこと、感じたこととは?それぞれの思いをじっくり伺います。お楽しみに!