女性の「自分らしく生きる」を健康から支える、チアーズビューティー

「私は、キャリアと健康は切っても切り離せないと思っています」

チアーズビューティーの上田あい子編集長は、そう話します。

働き続けたいと思っていても、人生には、仕事や自分だけに向き合っていればいいわけではない時期があります。

女性は毎月の生理と女性ホルモンとの付き合い、更年期、がんをはじめとする病気や不妊治療、子育てや介護など、仕事と何かを「両立」しながら生きていく場面が多い。

仕事との両立を支えるさまざまな制度がある一方で、それだけで女性が自分らしく働き続けられるとは限りません。

かつてテレビ局で番組制作に携わり、その後、女性コミュニティの運営とがん患者さんの支援を続けてきた上田編集長。

その声に耳を傾ける中で見えてきたのが、女性ならではの人生設計、具体的には女性の健康とキャリアをめぐる社会の課題でした。

そして、その課題と向き合う中で生まれたのが、医療・健康・美容、女性の不調に特化した医療情報メディア「チアーズビューティー」です。

なぜ、女性が自分らしく豊かな人生を過ごし、社会と関わり、働き続けるために、医療情報を届ける場所が必要だったのでしょうか。

Profile

福岡県出身。西南学院大学商学部経営学科卒業。KBC九州朝日放送株式会社に入社し、11年間にわたりプロデューサーとして情報ワイド番組や医療情報番組などの制作に携わる。

出産後、仕事と家庭の両立に悩み、自身も心身の不調を経験したことから、女性たちが支え合いながら夢を実現できる場の必要性を感じ、女性コミュニティ「チアーズ」を結成。2007年にP&Cプランニング株式会社を設立し、女性のQOL向上やワークライフバランスを支援する事業を展開する。

2010年には、抗がん剤治療による脱毛に悩む女性を支援する「ウィッグリング」活動を開始し、翌年NPO法人ウィッグリング・ジャパンを設立。

現在は、女性に寄り添う医療情報メディア「チアーズビューティー」編集長として、女性の自立・健康・QOLを支える情報を発信するほか、女性が長く活躍できる職場づくりや「チアーズ社外保健室」事業などにも取り組んでいる。

「もっと早く知っていたら。」

NPO法人ウィッグリング・ジャパンの活動を通して、がん患者さんの支援を続けてきた上田編集長は「もっと早く情報を知っていたら」という後悔に、何度も触れてきました。

2010年から1,000名以上の女性がん患者のアピアランスケアをしてきたNPO法人ウィッグリング・ジャパン
(画像提供:NPO法人ウィッグリング・ジャパン)

病気のこと。

治療の選択肢。

治療と仕事の両立。

治療後の生活のこと。

もし、もっと早く知っていたら、違う選択ができたかもしれない。

病気になると、考えなければならないのは治療のことだけではありません。仕事との向き合い方、これからの暮らし、そして人生そのもの。

そして同時に生活の制限や条件なども含めて、様々な選択が生まれます。

どんな選択肢があるのか。

どんな支援を受けられるのか。

わたしはどんな生活を選ぶのか。

それを知っているだけでも、気持ちの余裕が出てきます。

けれど、健康が仕事や暮らしに影響するのは、病気になったときだけではありません。

上田編集長は、女性たちが集うコミュニティ「チアーズ」を2005年から運営している中で、仕事や身体、これからの生き方について、さまざまな年齢、さまざまな立場の女性からの本音の声を聞いてきました。

一人ひとりの話を聞くうちに、これまで別々に見えていたものが、少しずつつながっていきました。

「キャリア・ケア・チャンス」をテーマにした女性コミュニティ「チアーズ」(画像提供:P&Cプランニング株式会社)

情報はある。でも、選べない。

身体のこと、病気の治療のこと、これからの働き方。自分にとって何がいいのかを考えるためには、まず「知ること」が必要です。

今は、気になることがあれば、すぐに調べられる時代。

インターネットやSNSには、医療や健康、美容に関する情報があふれています。

ところが、いざ調べ始めると、たくさんの情報を前に、かえって迷ってしまうことがあります。

「どれを信じればいい?」

「これは、本当に正しい情報?」

「私の場合は、どうなんだろう?」

ネット検索で出てくるのは、信頼できる情報ばかりではありません。

得体の知れない情報。

不安をあおり、商品やサービスへ誘導する情報。

科学的な根拠がはっきりしない情報。

さまざまな情報が、同じ画面の中に並んでいます。

情報がないわけではありません。

難しいのは、その中から何を信じ、何を選ぶのか。

「情報って、たくさんあればいいわけじゃないんですよね。正しい情報を、きちんと届けることが大事だと思っています」と、上田編集長は言います。

なぜ、「情報を届けること」に、これほど慎重なのでしょうか。

その背景には、テレビ局時代の経験がありました。

「生半可な情報は出せない」医療情報

どうすれば、人に伝わるのか。

どうすれば、人の心が動くのか。

テレビ局で番組制作に携わっていた上田編集長は、「情報を人に伝える」ということを、現場で学んでいきました。

多くの人に話を聞き、視聴者が何を求めているのかを考える。どうみせれば伝わるのか、どんなテンポなら最後までみてもらえるのか。番組づくりの現場で、上田編集長は試行錯誤を重ねてきました。

番組で伝えるのは、表面上の情報だけではありません。

例えば、スポーツにかける思いや、それを支える家族の姿。人の感情や人生を描きながら、その人が大切にしているものや希望を伝えることもありました。

伝え方によって、人の心は動く。

上田編集長は、テレビの現場で「情報が持つ力」を知っていきました。

一方で、商品を売るために、人の不安をあおったり、恐れを抱かせたりして、心を動かす。そんな情報の届け方について、上田編集長は、「物がこんなにあふれているのに、不要かもしれないものを買わせるっていう。そこには矛盾を感じていました」と振り返ります。

そして、医療番組の制作では、情報を伝えることの難しさを、さらに強く感じたといいます。

医療情報は、ほかの情報と同じようには扱えません。

「医療は、生半可な情報は出せないんですよね。正しく伝えるための表現力やスキルも必要だし、伝え方によっては人を傷つける可能性もあるから」

医師や専門家に話を聞き、情報の裏付けを取り、さまざまな立場から内容を検証する。医療番組は、多くの人と議論を重ねながらつくられていきました。

内容は正しいか。

一つの見方に偏っていないか。

そして、どう伝えるのか。

医療情報だからこそ、そこまで考えて伝える必要がありました。

テレビ局で学んだ、人に伝える技術。

情報が人を動かす力と、その怖さ。

そして、医療情報だからこそ求められる慎重さ。

テレビ局での経験は、上田編集長の「情報との向き合い方」にもつながっています。

だからこそ、大切にしているのは、ただ情報を届けることではありません。

「情報の百貨店」をつくりたい

体調が悪い。でも、病院でどの診療科を受診すればいいのかわからない。

そんなとき、患者さんの話を聞き、症状を見ながら、必要な診療科へとつないでいく「総合診療科」があります。

テレビ局時代、医療番組の制作を通してその存在を知った上田編集長は、女性の健康情報についても同じことが言えるのではないかと考えました。

健康のことを知りたい。

女性特有の不調や病気、治療について調べたい。

でも、どこを見ればいいのかわからない。

「情報の世界にも、総合診療科のような場所があったらいいんではないかと思ったんです。一人ひとりに寄り添いながら医療環境を整えていきたい」

病気のことを調べていたら、仕事との両立について知りたくなる。治療後の生活や美容のことが気になることもあります。

更年期や不妊治療について知りたいときもあれば、睡眠や食事、運動など、日々の体調を整えるための情報が必要なこともあります。

病気のこと。仕事のこと。身体のこと。これからの暮らしのこと。

別々の悩みに見えても、一人の女性の人生の中では、すべてがつながっています。

「いろんな分野の情報を、一つの場所で知ることができたらいいよね」

そんな場所を、上田編集長は「情報の百貨店」と表現します。

百貨店のように、さまざまな専門分野が一つの場所に集まり、その中から必要なものを探せる。

ときには、探していなかったものが目に留まることもあります。

情報も同じです。一つの情報をきっかけに、別のテーマにも関心が広がる。

「こんな選択肢もあるんだ」

それまで知らなかったことを知り、自分に必要なものが少しずつ見えてくる。

そんなふうに、一人ひとりが自分に必要な情報と出会える場所。

それが、上田編集長の思い描く「情報の百貨店」です。

「自分で選べる力」を届けたい

自分に必要な情報と出会い、選択肢を知る。

でも、そこから何を選ぶのかは、一人ひとり違います。

病気や治療のことも、仕事のことも、これからの生き方も、誰かにとっての正解が、そのまま自分の正解になるとは限りません。

「正しい情報と出会うことで、自分らしく生きていける。そのサポートをしていきたいんです」と、上田編集長は力を込めて言います。

目指しているのは、「この治療を選びましょう」「こういう生き方をしましょう」と、答えを示すことではありません。

一人ひとりがさまざまな選択肢を知り、自分にとって何が大切なのかを考える。

そのうえで、自分が納得できる道を自ら選んでいく。

「安心・安全な情報があることで、QOLや健康を保ち、自分らしく生きていくことにつながる。だから、一人ひとりが自分で情報を選べるように伴走する人が必要だと思ったんです。そこに気づいて、オリジナルのメディアを立ち上げました」

そんな思いを形にしているのが、チアーズビューティーです。

チアーズビューティーが目指しているのは、女性の健康に関する正しい情報を届けることを通して、女性が自分らしく生きるための「自立」を支えることです。

そして、情報発信とともに、もう一つ大切にしていることがあります。

「情報を届けるだけじゃなくて、それを学ぶ人も集めているんです」

正しい情報を学び、女性の健康について理解する人が増えれば、身体のことを話したり、悩みを相談したりすることも、もっと身近になります。

毎月1回、医師や専門家を招き、健康のことについて学ぶ。現在はオンラインで開催。
(画像提供:NPO法人ウィッグリング・ジャパン)

そこで、上田編集長が大切にしているのが「心理的安全性」です。

身体のことや悩みを安心して話すことができ、必要なときには誰かに相談できる。

安心して触れられる正しい情報があり、学んだり、相談したりできる場所があることは、女性が自分らしさやQOLを保ちながら生きていくことにもつながります。

そして、孤独にならないこと。

「自立」は、何でも一人でできるようになることではありません。

社会的にも身体的にも精神的にも経済的にも何かに依存したりするのではなく

自分の意思で選ぶこと、誰かとつながること。誰かを支えられること。

その結果、自分を自分で支えられるようになります。

これらが、チアーズビューティーの目指す女性の「自立」です。

チアーズビューティー公式サイトより

チアーズビューティーが目指す未来

「キャリアと健康は切っても切り離せない」

上田編集長がそう考えるようになった背景には、これまで出会ってきた女性たちの姿があります。

不妊治療や更年期、がんをはじめとする病気。子育てや介護。資格取得、キャリア。

女性の人生は、常に、仕事と何かを「両立」しながら進んでいきます。

そのたびに、これからどう働くのか、自分のキャリア計画、人生設計をどうしていくのか、選択を迫られることがあります。

そして、病気になったからといって、その人の人生やキャリアがそこで終わるわけではありません。

治療をしながら働く人もいれば、治療を終えて仕事に戻る人もいます。

「病気になっても、自分らしく生きてほしいんです」

そのために必要なのは、制度だけではないと、上田編集長は考えています。

自分の身体に何が起きているのかを知ること。どんな治療や支援、働き方の選択肢があるのかを知ること。そして、困ったときに相談できる場所があること。

さらに、本人だけでなく、職場や周囲の人たちが女性の健康について理解することも大切です。

働く女性の健康をどう支えるのか。それは今、企業にとっても無関係ではないテーマになっています。

チアーズビューティーを広めるために精力的に講演会やイベントに出展
(画像提供:P&Cプランニング株式会社)

「制度があっても、使う人が知らなかったら使えない。周りの理解がなければ、使いづらいこともありますよね」

制度を整えるだけでなく、女性自身が自分の身体について正しく理解し、職場にも女性の健康への理解がある。その両方があってこそ、働き続けるための選択肢も広がっていきます。

健康について知ることは、身体のためだけではありません。

自分の心身と向き合い、コンディションを整えることは、仕事のパフォーマンスにもつながります。長く働き、キャリアを築いていくためにも、心身の健康管理、自分の傾向と対策を知ることは欠かせません。

だからこそ、正しい情報と、それを学べる場所が必要です。

健康なときも、身体に不調を感じたときも、病気になったときも。

一人ひとりの女性が、自分の身体を知り、自分で人生とキャリアを選択する。

そして、誰かと支えあいつながりながら、自分らしい人生を歩んでいける社会へ。

それが、チアーズビューティーの目指す未来です。

【インタビュー記事担当者】


編集長:上田あい子

編集ライター:友永真麗

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