(前編)第2回 がん経験者座談会☆~がん治療とお金のこと~

がんに罹ると今までの生活が変わることへの不安があります。その一つであるお金の不安。今回の座談会では、治療中や治療後、どういうことにお金がかかるのか、利用できる治療費の支援制度について。また、治療中にこれまで通りに働けないことから生じる収入の問題など、参加者の皆さんの体験を語っていただきました。

参加者の自己紹介


中谷ミカさん(仮名)・40代
乳がん:2年生
治療内容:EC療法(エピルビシン、エンドキサンの2種類の抗がん剤を組み合わせた治療法)4回とドセタキセル4回。放射線療法。

セシリアさん・50代
卵巣がん:12年生
治療内容パクリタキセル+カルボプラチン3週に1回というレジメンでスタート。

北川まゆみさん(仮名) ・60代
子宮体がん:2年生
治療内容:抗がん剤治療 DC療法。パロノセトロン、ドセタルキセル、カルボプラチン

進行役:上野さくらさん(仮名) ・40代
乳がん :6年生

がんに罹った人のほとんどが利用する
高額療養費制度

今回は治療とお金というテーマで、まずは入院・手術・治療などでかかった医療費についてお話を聞かせていただけますか?

まず、がんと診断されてどのくらい手術代がかかるのかすごく不安でしたね。医療に詳しい友人にすぐに相談すると、「大丈夫、高額療養費制度があるから、そこまで怖がることはない」と教えてもらったんです。

高額療養費制度」は入院や手術などで自己負担が高額になる場合、その負担をする軽くするための公的制度ですね。

私のリンパをとった手術は約60万円でした。それが保険適応で3割負担になり、さらに「高額療養費制度」を利用して9万円ほどになりました。

年齢や収入によって自己負担の上限が違ってきますが、本当にありがたい制度です。

 

右胸の全摘手術も68万円ほどだったので、2回の手術で合計128万円ですからね(泣)。

それだけ聞くと本当に驚きますよね。中谷さんは現在治療中とのことでしたが、治療費の方はいかがですか?

私は抗がん剤を3週間に1回のペースで、計8回受けました。2種類の薬を使い、薬の種類によって費用も違ってきます。前半は、1回につき保険適用がなければ18万円、保険適用で5万円。後半は、保険適用で1万円でした。

数回受けないといけないので、抗がん剤治療も費用がかかるんですよね…。

そうなんですよ、さらに今、受けている放射線治療は初回は2万円(保険適用)、残り6,000円(保険適用)の25回。

25回!

私も驚いて、主治医の先生に何度も聞き直しました(笑)。これらの治療費も「高額療養費制度」の対象になります。
ただ、「高額療養費制度」は月単位の医療費の合計で計算されるので、月をまたぐと支援金額が少なくなってしまいます。できれば1ヶ月にまとめて治療できるとありがたい。

分かります!

私の抗がん剤治療は1回5万円で、月に2回受けると10万円かかりましたが「高額療養費制度」の自己負担限度限の9万円の治療費で受けることができました。ただ、月に治療が1回だと5万円まるまる支払うことになります。

先ほどの中谷さんのお話の中で、「薬の種類によって費用も違ってきます」と言われていましたが、それに関して一言言わせて!

なに?なに?

新薬は効果も高いけど価格も高い!

同感です! 保険と高額療養費がなかったらゾッとしますね。

高額療養費制度」には、「多数回該当」「世帯合算」というさらに自己負担を減らす仕組みもあります。また、「医療費控除」といって、自分やご家族の分も含めて、1年間に支払った医療費が一定の基準額(10万円、もしくは所得の5%)を超える際に、所得税の確定申告を行うことで、支払った税金の一部が返ってくる制度もあります。

いろいろな制度があると思うのですが、それらについては病院でがん相談支援窓口みたいなところで相談できるんですか?

そうですね、相談はできるのですが…、私の実感としては、相談員のレベルに非常に差があるように感じます。

なるほど…。

がん相談支援センターの情報では受給窓口にたどりつけないことも多いです。患者さん一人ひとりに合わせて、複数の選択肢のどれを何時利用するかの視点に欠けたり…。

がんの治療のことしか考えない場合もありますよね。患者側はがん治療だけなく、合併症のこと、生活のこと、家族のことなどいろいろ相談したいのに。

病院は医療費に詳しいですが生活面での思わぬ出費については把握が弱いですよね。制度も複雑で県や市町村レベルで異なったりするので、病院側も全てを把握するのは難しいのが現状ではないかと。

それでもやはり、まずは加入している健康保険の保険者や病院の支援センターに聞いてみるしかないですね。

参考:https://ganjoho.jp/public/institution/backup/index.html

治療後も体の不調を
整えるためのお金が必要

がん治療とは別にかかる費用はありましたか?

私はリンパを取る手術をしたことから、右腕がリンパ浮腫になっています。このリンパ浮腫の治療のために購入したのが、弾性グローブ1万9,800円、弾性スリーブ(昼用)9,800円、弾性スリーブ(夜用)9,800円です。

それは病院から勧められるんですか?

そうです。私の通院している病院にはリンパ浮腫ケアの部門があったので、説明を受けながら試着もできました。

リンパケアの部門は、まだまだ全国に充実していないと言われていますが、それはとてもラッキーでしたね。

それらの購入には保険は適応されるのですか?

はい。リンパ浮腫治療のための弾性着衣の費用は保険適応になります。ただし、購入時に一旦、全額を支払う必要があったり、1回の申請につき2セットまで。2回目以降の請求は、前回の購入から半年以上たっていることが必要など細かな決まりがあります。詳しくは、加入している健康保険の保険者に聞いてみることをお勧めします。 私の場合は1万6,000円補助が出ました。

ん? なんだか複雑ですね…。

そうなんですよ、ありがたいけどわかりにくい。リンパ浮腫治療のための弾性着衣に関する制度は、弾性着衣の販売業者が詳しいのでそちらにお問い合わせしてみたらいいかも。

むくみは右腕だけでなく、両足のむくみもひどいんです。ただ、これは薬剤性のむくみでリンパ浮腫ではないので、保険が適応されません。保険が適応になるのは、リンパ浮腫で弾性着衣をつける必要があると診断書を出されたときです。なので、足のむくみは、市販されている着圧ソックスのメディキュットやユニクロのレギンスで対応しています。それにもお金がかかりますね…。

北川さんの子宮体がんの治療から後遺症や合併症などはありましたか?

私は特に病的なものはないんですが、抗がん剤治療が終わってから、1年間は寝たきりに近い状態になってしまって。仕事もしていましたが、ほとんど動けない状態が続いたんです。その結果、筋力が落ちてしまい、今、リハビリやピラティスなどで筋力を鍛えています。これらは自費なので経済的にかなりの負担です。

がんの治療が終わっても、色々な不調が出てくるので、その対応にも出費がかさみますね。

生活面での思わぬ出費

治療以外にも意外なものにお金がかかりませんでしたか?

「経済毒性」といっても、手術代や薬代の話ばかり。
でも…、患者として本当に戸惑うのは、むしろ生活面での出費ではないかと私は思います。

ほんとそうなんですよね。私は1年ぐらい入退院を繰り返していたので、家族の食費やタクシー代にお金がかかりました。
当時、子どもが小学校3年生と5年生でまだ小さかったので、遠方から母にきてもらっていました。私だったらちょっと節約しようかなと普段の買い物で思うところも、母には節約してとも言えず…。多めに生活費を渡して、「これでやりくりしてください」とお願いしていました。

私も動けないとき、身の周りのことを人にお願いしていたのでよく分かります。

ちょっと出かけるにも車がないのでタクシー移動となり、かなりの出費になりました。医療保険の保険金はもらったのですが、まぁすぐに使い切っちゃって、結局貯金を崩して生活していました。

私も通院に交通費がかかります。放射線治療は毎日通院するので、定期を購入しました。あとは予想以上にかかったのが食費ですね。抗がん剤治療中は食事制限があったり、そもそも食欲がなく食べられないんだけど、どうしていいか分からなくて色々なものを買っては、やっぱり食べられなくて捨てることが多かったです。

私も一緒です!

食べたいものを自分に食べさせたいから、ちょっと豪華なものを食べたりして気分転換もしていました。

それは大事。

今は放射線治療で喉に食べ物が当たるとヒリヒリして違和感があるので、元気な時には買わないような柔らかいパンやヨーグルトなどを少しずつ時間をかけて食べています。

コストより食べやすいものや食べたいものを優先して買うので、食費が意外にかかるかもしれないですね。

私も食費にたくさんお金を使いました。今まで自分が食べていたものが食べられなくなって、何を食べていいか分からなくなり、色々買ってはみるものの、結局食べられないということがありますね。

がんの種類にもよりますけど、がん治療そのものの費用は、標準治療を選択し、保険と「高額療養費制度」を利用すればなんとかカバーできる範囲です。ところが、がん治療による合併症が結構あるんですよね。治療そのもの以外の医療費が結構かさみます。

そうですね。それと、お食事のことを皆さんおっしゃられていましたが、他にもむくみで服や靴が入らなくなったり、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けたらウィッグや帽子も必要になってきます。

手足が不自由になったことで家の改築が必要になる人もいるかもしれません。そういう衣食住に付随的な費用がかかってきますよね。

どんな病気になってもお金はかかります。ただ、どんなお金がかかるのか、支援制度はどのようなものがあるのかを知っておくことで、少しでも不安を和らげ、治療に専念できたらいいなと思います。

後編後編は「仕事ができず収入面はどうだった?」や「がん保険で思うこと」「がんに罹って変わったお金の価値観」などについて語っていただきます☆

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