(後編)第6回 医療者とのコミュニケーション

「医療者とのコミュニケーション、どうしてた?」がん経験者が語る座談会の後編です。

前編では、主治医や医療者との関係や慣れない病院での治療環境において、どうすればスムーズにやり取りができるのか、「こうしておけばよかった!」と今だから言える体験談を伺いました。

後編ではさらに一歩踏み込み、医療者との関係をよりよくするために「こんな関わりが安心につながる」や「伝え方」について、本音で語っていただきます。経験者だからこそ伝えられる、リアルな声をお届けします!

参加者の自己紹介

広瀬 かえでさん(仮名)・60代
子宮体がん:3年生

お住まい:福岡県

神戸 奈津子さん・50代(発症年齢:40代)
乳がん:12年生

お住まい:東京都


瀬戸 涼子さん(仮名)・50代(発症年齢:40代)
卵巣がん:6年生

お住まい:神奈川県


進行役:上野 さくらさん(仮名)・40代
乳がん8年生、血液がん6年生

患者が望む寄り添い方

医療者とコミュニケーションをとるうえで、「こうだったらいいのに」「こうしてもらえたら助かるな」と感じたことはありますか?

先生によって診察する時間が違いますよね。私の以前の主治医は2、3分が当たり前。でも今の先生は30分ほど時間をとってくれて、ちょっとした相談もしやすいんです。それがすごくありがたくて。

えっ、30分?いいなぁ…、私なんて5分で終わっていました。聞きたいことがあっても、慌ただしくてなかなか言い出せなかったです。

先生が話しやすい雰囲気を作ってくれるんですよ。

先生によって診察時間や接し方にも個人差はありますよね。

言葉遣いも先生によってかなり違ってきます。先生は毎日たくさんの患者さんを診ているから、慣れているんでしょうけど、私たちはすごく緊張しているし、ちょっとした言葉にも敏感になりますよね。ストレートにズバッと言われて、すごく傷ついたことがありました。心の準備ができていないのに、いきなり重い話をされると…。

患者本人も、もちろんショックだけど、家族のほうがより傷つくこともありますよね。最近は、患者さんに寄り添ってくださる先生も多くなってきていますが、先生の言葉一つで、患者さんの気持ちが左右されることもありますね。

ほんとですね。先生の言葉ひとつで気持ちが軽くなったり、逆に不安が大きくなったりするので、伝え方って大事だなって思います。

それに、精神的なケアをしてくれる専門の先生がもっと増えてくれたらいいのになって。日本には「精神腫瘍科」という、がん患者の心のケアを専門にする先生がいます。でも、まだまだ数が少なくて…。私は実際にお世話になったことがあるんですけど、すごく助けられました。

がんは体だけじゃなくて、心にも大きな影響を与えます。だからこそ、こういうサポートがもっと充実してほしいですね。

がんと告知された瞬間から、治療の過程、そしてその後の生活まで、患者の気持ちはずっと揺れ動いています。そういう中で、心の支えになってくれる存在がいるかどうかで、不安の大きさが変わってきますよね。

私は一人暮らしなんですけど、手術の翌日から主治医に「いつ退院する?」って何度も聞かれて…。先生に悪気はなかったと思うんですが、すごく不安でした。

入院中は医療者がそばにいるから安心だけど、退院して病院を出た瞬間、「何かあったらどうしよう」って、すごく心細くなりますよね。

本当にそう!私と同じ病室の人も、退院してすぐに熱を出して戻ってきたんです。退院のタイミングってもう少し慎重になってほしいなって思いました。

病院の事情もあるから、入院期間を延ばすのは難しいんだろうけど…。せめて、退院後のフォローがもう少し手厚くなると安心できますよね。

治療を終えて10年経つと、再発の心配はあるけど、情報を積極的に集めることが少なくなってきて…。でも、チアーズビューティーさんみたいに医療情報を発信してくれる場があると、本当にありがたいです。

こういうがん経験者の座談会もすごくいいですよね!私たちがお話しすることで、今、不安に思っている人が「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえれば嬉しいです。

ほんとそうですね。私も、自分の経験が誰かの役に立てるならと思って、今日参加しました。

患者さんだけじゃなくて、お医者さんにもぜひ見てほしい!(笑)「患者はこう思ってるんだよ」って伝わると、接し方も変わるんじゃないかな。

皆さんの経験を聞いて、「患者の声をもっと医療者に届けること」が大切だと改めて思いました。

患者からの効果的な伝え方

以前、学会で「具体的な伝え方」について講演されていた先生がいました。その先生は患者側も、自分の状況が伝わるように工夫することが大事だと話されていました。

どんなふうにですか?

具体的に何をしたら苦しくなるとか、どのくらい痛いかとか。例えば、医師からは「最近どうですか?」みたいな、ふんわりした質問をされることが多いですよね。その時に「少し動くときついです」ではなくて、「犬の散歩はできるけど、買い物はきつい」「痛みはあるけど、このくらいの動作はできる」みたいに、日常の行動に落とし込んで伝えると、医師も具体的にイメージしやすくなるんだそうです。

なるほど〜!

薬が飲めるかどうか、副作用がどのくらいあるかなど、数値で測れない部分ってありますよね。そういうときに、「飲める・飲めない」だけじゃなくて、「この時間帯なら大丈夫だけど、朝は胃がムカムカする」みたいに、自分なりの“バロメーター”を使って伝えると、相手にも状況が分かりやすくなるそうです。

これは医師とのやりとりだけじゃなくて、家族や職場の人にも同じことが言えそうですね。「この時間帯は動けるけど、夕方になるとしんどくなる」とか、「短時間なら大丈夫だけど、長時間の外出はきつい」みたいに、自分の状態を具体的に伝えることで、周りの理解も変わりそうです。

数値化できないことだからこそ、自分なりの表現を工夫するのが大切なのかもしれませんね。では、他に患者側は、どんなふうに伝えるとよいと思いますか?

とにかく遠慮せず、不安なことや分からないことは聞く!これに尽きると思います。

ほんとそうですよね。ただ、通院していくと、慣れてくるので「あ、こんなもんだ」って思って、自分で情報を取りに行くようになりますが、最初の頃ってとにかく、冷静な状態じゃないんで、その時に自分が落ち着いて質問するのってすごく難しいなって感じます。

確かに。でも、例えば抗がん剤治療で髪の毛が抜けるタイミングって、人によって全然違うんですよ。でも、当事者としては「こんなことになってるの、私だけ?」って不安になる。そういうときに先生に相談すると、「そんなことないですよ。こういう人もいますし、こういうケースもあります」って、きちんと説明してくれます。だからこそ、不安なことは遠慮せずに聞いて、ちゃんと伝えることが大事だなって思います。

患者と医療者、どちらの立場でも歩み寄ることが大切ですよね。患者さんが「こうしてほしい」と伝えることで、医療者も「そういう気持ちだったんだ」と気づくことができる。お互いに情報を共有し、理解を深めることで、より良い治療につながっていくんじゃないかと思います。

セカンドオピニオン
考えたことはありますか?

みなさんは、医療者とのコミュニケーションがうまく取れなかったときや、治療方針に迷ったとき、セカンドオピニオンを考えたことはありますか?

私の知り合いは、セカンドオピニオンをして、そちらで手術をしたそうです。でも、実は最初の病院は、私が手術を受けた病院でした。私にとってはすごく良い病院だったので、やっぱり先生によるのかなぁと思いました。でも多くの人が、「こんな対応する先生は嫌だなぁ」と思っても、そこからセカンドオピニオンを受けてみよう、っていう発想にはなかなかならないですよね。

私は、がんを告知されたとき、とにかく「なんで私が…?」って、そればかり考えてしまって。仕事もしていたから、とにかく「早く病院を決めて、早く治療を始めなきゃ!」っていう気持ちが強かったですね。「これ以上時間が経つと、病状が悪化してしまうんじゃないか」という不安も大きくて、セカンドオピニオンを考える余裕は正直なかったですね。

私は、主治医からセカンドオピニオンを勧められました。「うちでも手術できますが、大学病院でもできますよ。ご自分で選んでください」って。

先生の方からお話があるケースもあるんですね。

そうなんですよ。でも、子宮の病気だったので、検査が痛くて…。セカンドオピニオンを受けるとなると、また同じ検査をしなきゃいけないかもしれないと思うと、それが嫌で。それに、最初の先生がすごく良い先生だったので、そのままそこで手術を受けることにしました。

私も主治医に「セカンドオピニオンするのもありですよ」って言われましたね。でも私は初期だったし、もう全部取るしかないなら、どこで手術しても同じだろうなと思って、家から5分で通える今の病院を選びました。

心に残る、医療者の温かい言葉

医療者とコミュニケーションを取る中で嬉しかった言葉かけなど印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

私が入院していたのは、ちょうどコロナが一番ひどい時期でした。面会は一切できず、手術もひとり。とにかく不安でいっぱいでした。でも、そんな中で支えになったのが看護師さんたちと主治医でした。 先生は毎日必ず2回は病室に来て、「どう?」と声をかけてくれたんです。ポツンとひとりで過ごす中で、その言葉がどれだけ嬉しかったか…。コロナの影響で患者同士が話せる場も閉鎖されていたので、なおさらありがたかったですね。

私は 2回目の入院のとき、がんが残っていると言われてしまって、とにかく怖くて。悩む暇もなく、すぐに入院して手術を受けました。

でも、先ほども言ったように手術後、先生が退院を促してきて…。

その日の夜、急に悲しくなって、涙が止まらなくなったんです。4人部屋だったので、静かに泣いていたつもりだったんですけど、看護師さんが回ってきたときに気づいたみたいで。 「今まで、本当に大変だったよね。今回もすごくつらかったよね」って、優しく声をかけてくれたんです。そして、「もしよかったら、空いてる個室に移る?」って言ってくれて。もう、それが本当に嬉しくて…。ただ泣いていた私の気持ちを、ちゃんと分かってくれたんだって思ったら、すごく救われました。

看護師さん、本当に素敵ですね。何も言わなくても気づいてくれるって、それだけで救われるのよくわかります。

あと、退院したものの、不安はずっと続いていました。でも、薬をもらいに行くたびに、薬剤師さんが必ず声をかけてくれて、「調子はどうですか?」「何か気になることはありますか?」って、親身になって話を聞いてくれたんです。

ちょっとした声かけだけど、「気にかけてくれている」って感じられることが、どれだけ心の支えになったか…。そういう医療者の存在に、改めて感謝しています。

私が嬉しかったのは、手術の後って、しばらく寝たきりじゃないですか。その間、尿を自動的に取る管をつけていたんですが、それが痛くなってしまって…。

ちょっと言いにくいことだったけど、「言わなきゃ伝わらない」と思って、看護師さんに相談したんです。そしたら、すぐに調整してくれて、本当に助かりました。

それから、尿をためるバッグって、色を確認するためなのか、半透明で中身が見えるんですよね。交換の時にいつも恥ずかしくて…。毎回「すみません、ありがとうございます」って言ってたんです。そしたら看護師さんが、「瀬戸さんにとっては恥ずかしいことかもしれませんが、私たちにとっては日常のことですから、気にしないでくださいね」って言ってくれて…。

もう、その言葉がすごく嬉しくて、医療者の方って本当に尊いなって思いました。患者にとっては気を遣うようなことでも、医療者にとっては日常の仕事として、当たり前のように受け止めてくれる。そういう姿勢がありがたかったですね。

みなさんの貴重な体験談をありがとうございました!医療者とのコミュニケーションの難しさ、患者としてどう伝えるか、どんな心構えでいるといいのか、たくさんの気づきがありました。患者と医療者がお互いに歩み寄りながら、より良い関係を築いていけたらと思います。

こうした経験を共有することで、これから治療を受ける人や、医療に関わる方々にとって、少しでも役立つものになれば嬉しいです。 みなさん、本当にありがとうございました!

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